カーボンクレジットの枠組みと概要
排出権 (排出量) 取引制度とは
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書 (Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change) (1997年12月11日 採択、2005年2月16日 発効) 第十七条により規定され、国家間での炭素排出量の取引を認めるものです。
Article 17 The Conference of the Parties shall define the relevant principles, modalities, rules and guidelines, in particular for verification, reporting and accountability for emissions trading. The Parties included in Annex B may participate in emissions trading for the purposes of fulfilling their commitments under Article 3. Any such trading shall be supplemental to domestic actions for the purpose of meeting quantified emission limitation and reduction commitments under that Article. KYOTO PROTOCOL TO THE UNITED NATIONS FRAMEWORK CONVENTION ON CLIMATE CHANGE
第十七条 締約国会議は、排出量取引(特にその検証、報告及び責任)に関する原則、方法、規則及び指針を定める。附属書Bに掲げる締約国は、第三条の規定に基づく約束を履行するため、排出量取引に参加することができる。排出量取引は、同条の規定に基づく排出の抑制及び削減に関する数量化された約束を履行するための国内の行動に対して補足的なものとする。 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書 (日文訳)
京都議定書は、国連の主導する、環境と開発に関する国際連合会議 (United Nations Conference on Environment and Development: UNCED) によって採択された気候変動に関する国際連合枠組条約 (UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change) において、1997年開催の第3回気候変動枠組条約締約国会議 (Conference of the Parties: COP3) において採択されています。その中で、温室効果ガスを1990年を基準として国別に削減率を定め、約束期間内に目標値を達成することが定められています。
また、京都議定書では目標達成のための柔軟性措置として排出権取引制度を含めた3種の京都メカニズムを定めています。
共同実施 (JI: Joint Implementation)
附属書Iに掲げる締約国 (先進国) 間で、排出量削減にかかる取り組みを行った場合に、得られた削減量 (排出削減単位 ERUs: Emission Reduction Units) を実施国、受入国間で取引することを認めた措置。
クリーン開発メカニズム (CDM:Clean Development Mechanism)
非附属書I締約国 (発展途上国) に対し、附属書I締約国 (先進国) が技術また資金供与を行い、排出削減にかかる取り組みを行った場合に、共同実施と同じく削減量 (認証排出削減量 CERs: Certified Emission Reductions) を実施国、受入国間で取引することを認めた措置。
排出権 (排出量) 取引 (ET: Emission Trading)
前述のように、国家間での温室効果ガス排出量を取引する制度です。京都議定書17条では、削減枠を取引する制度として、Cap & Trade方式が規定されており、続くパリ協定6条において、既存の温室効果ガス吸収量に対する追加枠の取引 (Baseline & Credit方式) へと拡大されています。
Article 6-1 Parties recognize that some Parties choose to pursue voluntary cooperation in the implementation of their nationally determined contributions to allow for higher ambition in their mitigation and adaptation actions and to promote sustainable development and environmental integrity. PARIS AGREEMENT
日本のJ-Creditおよび排出削減・吸収にかかる方法論の例
排出量をクレジット化したカーボンクレジットの認証では、吸収量の測定や信頼性の向上のために、それら手法を方法論として規定しています。方法論は、国連機関において認証され、その追加にも同様に認証を経る必要があります。今後認証が期待される方法論として、CCUS(天然ガス田などへの二酸化炭素貯留)がありますが、こちらは貯留の持続性や注入コストが課題となっています。日本にはJ-Creditという排出量取引制度が存在します。こちらも同様に国連に認証された方法論を用います。
方法論は以下のようなものに分類されます。
省エネルギー:従来からエネルギーの効率化を行い、排出削減量をクレジットにする。
EN-S-008 Ver.1.0 変圧器の更新
例:EN-S-008 変圧器の更新
本方法論は、電力損失の小さい変圧器へと更新することにより、変圧器における電力損失を削減する排出削減活動を対象とするものである。
再生エネルギー:化石エネルギーから再生エネルギーに転換し、その排出量の差分をクレジットにする。
EN-R-002 Ver.2.2 太陽光発電設備の導入
例:EN-R-002 太陽光発電設備の導入
太陽光発電設備を導入することにより、系統電力等の使用量を削減する。
工業プロセス:工場生産などの過程で排出されるCO2を、プロセスの見直しなどで削減し、その分をクレジットにする。
IN-002 Ver.1.0 麻酔用N2O ガス回収・分解システムの導入
例:IN-002 麻酔用N2O ガス回収・分解システムの導入
麻酔用N2Oガスが使用される医療施設において、麻酔用N2Oガス回収・分解システムを導入することでプロジェクト実施前に無処理で大気放出させていたN2Oガスを回収・分解する。(N2Oの温室効果をCO2換算)
農業:豚の排泄や肥料など、農林水産業におけるCO2排出を削減し、削減分をクレジットにする。
AG-001 Ver.2.3 豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌
例:AG-001 豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌
慣用飼料に代えてアミノ酸バランス改善飼料を給餌することにより、排泄物管理からのN2O排出量を抑制する。(N2Oの温室効果をCO2換算)
廃棄物:豚の排泄や肥料など、農林水産業におけるCO2排出を削減し、削減分をクレジットにする。
WA-002 Ver.1.1 食品廃棄物等の埋立から堆肥化への処分方法の変更
例:WA-002 食品廃棄物等の埋立から堆肥化への処分方法の変更
食品廃棄物等を埋立処分から堆肥化へ処分方法を変更し、CH4排出量を抑制する。(CH4の温室効果をCO2換算)
森林:これまで森林でなかった場所への植林や、適切な森林管理などによりCO2吸収量を増やし、吸収分をクレジット化する。
FO-001 Ver.2.6 森林経営活動
例:FO-001 森林経営活動
森林で、森林経営計画に基づく森林経営活動を実施することで、地上部・地下部バイオマスによる吸収量が増大する。